Home / 恋愛 / 溺愛メイドは予知能力あり / 第6話 すれ違い①

Share

第6話 すれ違い①

last update Huling Na-update: 2025-05-29 16:48:42

 あれから聖を監視する日々がはじまった。

 いつなんどき、誘拐されるかわからない。絶対に阻止しなければ。

 二十四時間監視するのは難しかったが、さくらの出来る限りの時間を聖の監視に費やしていた。

 仕事もなるべく早く終わらせ、聖を監視する。

 自分のことはおざなりに、聖を常に遠くから見守ることに生活のすべての時間を費やしていた。

 だから、さくらを見つめる他の目に気づけなかった。

 異常なまでに聖に張り付いているさくらを怪しむ人物、誠一に。

「あいつ、絶対怪しい……」

 聖を追うさくらを誠一は監視していた。

 そんな誠一の動向に気づいた旭は、誠一のことを監視する。

 このように監視の連鎖が起きていることなど、つゆほども知らないさくらは、聖のことだけに集中する毎日を送っていた。

 すでに日常化している監視のため、さくらは聖のあとをつけていく。

 いつもの学校からの帰り道、今日も何も変わったことはない。

 あの映像を見てから、三日経つが何も起こらない。

 いつもなら映像は直前に見ることが多かったが、今回は違ったようだ。

 いったいあと何日後のことなのだろう。

 いや、油断は禁物だ。いつそれが起こるかはわからないのだから。

 そのとき、後ろの方から車の音が近づいてきた。

 勢いよく走って来た一台の黒いワゴン車が、聖の横に停車する。

 その車から降りてきた黒ずくめの男が、聖に近付いていき、彼の腕を掴んだ。

「聖様!」

 さくらは叫ぶと同時に聖に向かって走り出していた。

 声に驚いた男が聖を無理やり車に押し込もうとするが、聖の抵抗により男は苦戦している様子だった。

 その隙に、さくらは男に掴みかかる。

「放しなさい! ――誰かっ!」

 さくらが騒ぎだすと、車の反対側から新たな男が現れる。そしてさくらの動きを止めると口を塞いだ。

「おい、どうする?」

「しかたない、そいつも連れていく」

 二人の男のやり取りが聞こえた。

 しまった、このままでは二人とも連れ去られてしまう。

 男たちが聖とさくらを車に押し込もうとした。

 次の瞬間、さくらを捕らえていた男が吹っ飛び、数メートル先の地面に転がった。

 いったい何が起きたのかわからないさくらは、目をしばたかせる。

「本当に、あなたからは目が離せませんね」

 突然聞こえてきた声に振り返ると、そこには旭がいた。

 旭は汚いものに触ってしまったかのように服を払い、あきれた様子でさくらのことを見つめている。

「旭さん!」

 旭は聖を捕らえている男の懐へ一瞬にして入り込むと、みぞおちに拳を入れた。

 男は低く呻き、その場に崩れ落ちていく。

「聖様、大丈夫でしたか?」

 すずしい顔で聖に話しかける旭。

 聖は戸惑いながら頷くと、すぐにさくらの方へ駆け寄る。

「さくら、大丈夫だったか?」

 心配そうに目を細めた聖はさくらの顔を覗き込む。

「ええ、私は大丈夫です。聖様こそご無事でよかった」

 さくらが言い終わらないうちに、聖がさくらを抱きしめる。

「あの、聖様っ」

 さくらは突然のことにあたふたして、手をパタパタと動かす。

 いったい何が起きているのかわからなかった。どうしていいかわからず、聖の腕の中でさくらは硬直する。

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Mga Comments (1)
goodnovel comment avatar
憮然野郎
さくらも聖も無事でよかったですね...️...
Tignan lahat ng Komento

Pinakabagong kabanata

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第13話 間違った判断

     その日は夜も遅く「明日さくらに伝えなさい」と智彦に説得された聖は、素直に次の日を待つことにした。 朝が来て、さくらの喜ぶ顔を想像しながら聖は彼女を探した。 メイドの朝は早い、もう起きて仕事に取り掛かっている頃だろう。  今の時間は厨房にいるかもしれない、そう思った聖は厨房へと急いだ。  厨房では、朝食の支度をするコックやメイドたちが忙しそうに走り回っている。 声をかけづらい雰囲気に、どうしたものかと考えあぐねいていると、「聖様、どうされましたか?」 旭が声をかけてきた。「旭、さくらは何処だ?」 「はい、私も探しているのですが、見つからなくて。部屋にもいませんし、いつもならもうここへ来ているはずですが」 旭の心配そうな表情を見ながら、聖はなんだか妙な胸騒ぎを感じた。 まさか、そんなわけないと思いながらも、聖の足はある場所へと駆け出した。  隣の部屋ではメイドたちが忙しなく、朝食の準備を整えている。  その音を聞きながら、智彦はいつものようにソファにゆったりと腰かけ、新聞に目を通していた。「父上!」 聖が血相を変えやって来ると、そのことをわかっていたかのように智彦はいつも通り対応した。「何か用か?」 智彦は聖を見ようとしない。  聖はさらに嫌な予感が膨らんでいくのを感じ、ゴクリと唾を飲み込んだ。「……さくらは、さくらは何処ですか?」 智彦が新聞を畳んで、机に置く。 ゆっくりと聖に向き直ると口を開いた。「この屋敷に、さくらはもういない」 聖には、その言葉の意味がわからなかった。「どういうことです!」 聖が叫ぶと、智彦は冷酷な目と声で告げる。「さくらはこの屋敷から出て行った」 その瞬間、聖はすごい速さで智彦の側まで近づいていく。  そして智彦の胸ぐらを掴み、立たせる。 聖の瞳は怒りに満ちていた。

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第12話 動かない心②

     その一部始終を見ていた梨華が、ショックで泣き出してしまう。  すぐに梨華の父の怒りが爆発した。「黒崎さん、これはどういうことですか!  このような態度は、梨華を侮辱したも同然! これがどういうことかわかっているのか!」 娘を侮辱された父親の怒りほど恐ろしいものはない。  智彦はどうにか相手の怒りを鎮めるように、努力することしかできなかった。「申し訳ありません、どうか穏便に。  聖にはよく言って聞かせますので。どうか今回はお許しを」 智彦は頭を下げ、謝り続ける。 しかし、梨華の父の怒りが収まることはなかった。  その夜、聖は智彦に呼び出された。「――おまえ、どういうつもりだ?  梨華さんは泣き出すし、御父上はお怒りで。もうこちらの話を聞いてくれない。  北条家との関係が悪くなったらどうしてくれるんだ! 北条家と繋がりを持てるなんて幸運なことなんだぞ!  梨華さんだってあんなに美しくて優しそうな方じゃないか。何が不満なんだっ」 智彦がいくら言い聞かせても、聖は聞く耳をもたない。  もう心は決まっている、というように。「さくらか……。あの娘がおまえを惑わすのだな」 智彦が少しの間、黙って何かを思案しているようだった。 そして、決定的な言葉が放たれた。「ならば仕方ない。さくらはこの屋敷から出ていってもらおう」 今まで黙っていた聖が急に叫んだ。「父上! そんなこと、私が許さない!  そんなことをしたら、私はこの家と縁を切ります」 聖は冗談ではなく本気で言っているのだと、智彦にもすぐにわかった。  しかし―― 眉を寄せ、大きな息を吐いた智彦は聖を見つめる。「わからん、そこまでしてあの女と一緒になりたいのか?  父を裏切っても? この家を捨ててでも?」 智彦の問いに、しっかりと頷き返す聖。  その瞳には、何に

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第12話 動かない心①

     応接室には聖、梨華、智彦、そして梨華の父親がいた。 聖と智彦が同じソファに座り、その向いのソファに梨華と梨華の父親が座っている。  まさにお見合いの席、という空気感が漂っていた。「失礼いたします」 さくらが紅茶を載せたカートを押し、ゆっくりと四人の側へやってきた。 紅茶を持ってきたのがさくらだと知り、智彦と聖は驚いたが、客前なので冷静を装う。 しかし、聖はさくらが気になり目で追ってしまっていた。  それを梨華は見逃さなかった。 梨華は聖を見つめていた視線を動かし、さくらの方を見る。  その目は、何かを探っているようだった。 さくらは紅茶を注ぐと、カップを梨華の父の前にそっと置く。続いて、梨華の前にも置いた。「あなた、ここのメイドさんよね。……とても可愛らしい」 突然、梨華がさくらに声をかける。  思ってもみない梨華の行動に、さくらは驚き戸惑ったが、メイドとして笑顔を返した。「はい、黒崎家に仕え、六年になります」 梨華は驚いた様子で目を見開き、口元を手で隠した。「その若さで、既に六年も?  小さな頃からこのお屋敷にいらっしゃるのね……羨ましい」 梨華は少し落ち込んだように肩を落とす。  皆が不思議な顔をして梨華を見た。 注目された梨華は、少し照れたように頬を染めた。 その姿は本当に可愛らしく、女性のさくらでさえ見惚れてしまうほどだった。「いやだわ、ごめんなさい。メイドさんに焼きもちなんて」 そう言うと、艶っぽい眼差しを聖に向ける。  聖はそんな視線など見向きもせず、さくらばかり見つめていた。「私、幼き頃より聖様のことが好きでした。  この度、聖様の婚約者に選ばれて、すごく嬉しかったんです。  ……でも、こんな可愛いメイドさんがずっと聖様の傍にいたかと思うと、心配で」 梨華がため息をつきながら下を向く。 この空気はまずいと思った智彦が、すぐさ

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第11話 婚約者②

     そして、とうとうその日はやってきた。 聖の婚約者の北条(ほうじょう)梨華(りか)が屋敷へ訪れる。 梨華は不動産業界で名を馳せる北条家の娘。  北条家は不動産業界でもトップに君臨し、ホテル経営では右に出る者はいなかった。 彼女は聖と相応しい肩書の持ち主だ。 さらにはその美貌、彼女はとても美しかった。 黒く長い髪に映える豪華な髪飾り、華奢な体には着物姿がよく似合い、桜模様が彼女の女性らしさを際立たせている。  長いまつげに大きく丸い瞳、そして小さく真っ赤な唇。まるで日本人形のようだった。 とても女性らしく、儚げで、守ってあげたくなるような雰囲気を醸し出している。 なんであんなにすべてを持っている人がいるのだろう、神様は不公平だ。  さくらは心の中でそっとつぶやいた。  応接室へと続く扉の前にはメイドたちが群がる。 梨華を一目みようと、メイドたちが扉付近に集まっていた。  皆、そわそわと瞳を輝かせている。 さくらもその集団の中から、梨華の様子を眺めていた。「あれが聖様の婚約者ですって」 「まあ、可愛らしいこと」 「お似合いよねえ」 「不動産関係の財閥令嬢なんですって」 メイドたちがひそひそと話に花を咲かせていると、コホンと咳払いが聞こえた。「みなさん、仕事に戻って」 旭にたしなめられたメイドたちは、しぶしぶ持ち場へと戻っていく。「大丈夫ですか?」 旭がさくらに耳打ちする。「え? 何がですか?」 さくらは悟られまいと、わざと元気な素振りで振り返った。「いや、ほら、聖様の婚約者のこと」 旭は言いにくそうに眉をひそめる。「はい、大丈夫です。前からわかってたことですから」 さくらはニコッと微笑みながら答えた。  好きになったって、両想いになったって、現実はこれだ。  結局、結ばれはしない。 そんなこと、わかってた

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第11話 婚約者①

     屋敷の中を、一人のメイドが駆け抜けていく。 さくらは長い廊下を走りながら、ところどころで止まり、辺りをキョロキョロと見渡す。 そう、さくらは聖を探している。  専属が解かれたことを報告するためだ。  智彦の部屋を通りかかったとき、中から大きな声が聞こえ、さくらは足を止めた。「おまえは何を言っているんだ! 正気か?」 いつもは温和な智彦が、声を荒げ叫んでいる。 いけないことだとは知りつつ、どうしても気になったさくらはドアの隙間から中の様子を覗き見る。  そこにいたのは、聖と智彦の二人。 ただならぬ雰囲気でお互い睨み合っている。「僕は本気です、将来はさくらと一緒になりたいと思っています」 聖のその言葉を聞き、智彦は肩を落として大きなため息を吐く。「さくらはただの使用人だぞ。  おまえがさくらを気に入っているのは知っている。  遊びならいい、しかし結婚は駄目だ」 「なぜですか? 誰を選ぶかは僕が決めます。  それに、使用人だからって何だっていうんですか。結婚しては駄目な理由になどならない。僕たちは愛し合っているんです」 いつもは物静かな聖も、ここは引けないとばかりに智彦に喰ってかかる。 智彦は駄々をこねる子どもに、どうしたものかと悩む親のような顔をしていた。  そして、当主らしい顔つきになったかと思うと、はっきり告げる。「ここは黒崎家だ、一使用人の娘と結婚など許されない。  そういう家におまえは生まれたのだ。  私はおまえを愛している、もちろん勘当なんてできない。  いいか、よく聞け。人には身分相応というものがある。  聖には、婚約者を用意している。今度紹介するから、そのつもりでいるんだ」 智彦の一方的な発言に、聖は反論する。「そんなこと知りません! 僕はさくら以外の人と結婚など」 「黙れ! これは命令だ!」 迫力のある一喝に、さすがの聖も黙ってしまう。

  • 溺愛メイドは予知能力あり   第10話 兄としての苦しみ②

    「おまえに何がわかる? 俺はこの家の長男だ、この家を背負う運命をもって生まれてきたんだ!  父上の期待を背負い、それに応えなければならない。昔から必死にこの家の当主になるために頑張ってきた……。  それなのに、父上が可愛がるのはいつも聖だ。  あいつはたいしたこともできないのに、可愛がられていた。  俺は、何か成果を出さないと褒められたことがない。俺は常に何かを成さなければならない! そうしなければ、俺の存在価値などっ――」 誠一の言葉を途中で遮り、突然さくらは誠一を抱きしめた。 驚きのあまり、誠一はさくらを凝視し固まってしまう。「誠一様、ずっと苦しんでおられたのですね……。  私、わかります。私もずっとそう思って生きていました。  私は空っぽで、ありのままの自分では愛されない。誰かのお役に立たないと、誰かから必要とされなければ生きている意味がないと。  ……でも違った。  聖様や旭さんが私のことを受け入れ、必要としてくださいました。  そのままでいい、さくらはさくらのままでいいと。  すごく嬉しかった。  私も誠一様と一緒にいて、誠一様はそのままで素敵な方だと思いました。  私はそのままの誠一様が好きです、どうか一人で苦しまないでください」 誠一の脳裏に母の姿がよぎった。さくらに母の面影が重なる。  母は小さい頃に亡くなっており、少しの記憶しかなかったが、とても優しく温かい人だった。 さくらの温かさは母親のものと似ていた。 誠一の中の、今まで張りつめていた気持ちがふっと消えていくのを感じる。 なんだろう、不思議な感覚だ。  自分では気づいていなかったが、俺は誰かに本当の自分を認めて欲しかったのだろうか。 何者でもないありのままの自分を、受け入れて欲しかったのか。 導き出されたその答えを誠一は認めたくはなかったが、この感情は認めざるを得ない。  今まで感じたことのない安らぎに満たされていた。 誠一は悔しそうにさくらを見つめる。

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status